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東京高等裁判所 昭和52年(う)2597号 判決

本店所在地

東京都品川区中延五丁目二番七号

セントラル観光興業株式会社

右代表者代表取締役

関好夫

本籍

同都同区西大井三丁目五一二〇番地

住居

同都同区中延五丁目二番七号

会社役員

関好夫

昭和一三年七月五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、昭和五二年一〇月一七日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告法人及び被告人からそれぞれ控訴の申立があったので、当裁判所は、検察官藤岡晋出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人小林宏也、同本多藤男及び同長谷川武弘連名作成名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官河野博作成名義の答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。

控訴趣意第一点の第一 被告法人の昭和四八年一二月期における所得金額及び課税土地譲渡利益金額の誤認を主張する論旨について(以下判断の便宜上論旨を一ないし四に区分することとする。)

論旨の一は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下昭和四八年一二月期という。)における所得金額の認定にあたり、これを構成する土地譲渡益について、品川区戸越所在の土地及び同区豊町所在の土地の各譲渡益のほ脱があったとして、これを右各金額に加えたが、右土地譲渡益申告漏れの結果は、経理担当者が事務処理を誤り、被告人がそれに気付かなかったことによるものであって、被告人は右除外された土地譲渡益を確定申告から除外する意思がなかったのであるから、原判決がこれをほ脱所得金額に加えたことは誤りである、というのである。

そこで検討してみるのに、右戸越の土地の買受関係者である加藤郷雄ほか一名に対する各質問てん末書、右豊町の土地の買受人らによる取引内容照会に対する各回答書面及び被告人の検察官に対する各供述調書によれば、右戸越の土地及び豊町の土地の取引については、被告人が直接各買受人らと交渉して売買代金額を決定していること、当時、被告法人の経理事務は萩原伊世子が担当していたが、同人は取引の実際面には関与せず、また、被告人からの指示や渡された領収書その他の証憑書類に従って機械的に事務処理をするだけで、被告法人の取引をどの程度会社の帳簿に記帳するかはすべて被告人の判断するところであったこと、決算書や法人税の申告書は、右萩原が作成し、被告人は萩原から説明を受け、その内容、金額を確認したうえ法人税の確定申告をしていたことが認められ、被告人も検察官に対し、被告法人の総勘定元帳等の資料に基づき、これらの土地についてことさらに仕入価格及び売却価格を過少に計上した経過を詳細に自供しているのであって、所論にそう被告人の当審公判定における供述はにわかに信用することができない。してみれば、被告人に右各土地の譲渡益隠ぺいの意思があったことは明白で、原判決が同譲渡益をほ脱所得金額に加えたことは正当であり、論旨は理由がない。

論旨の二は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四八年一二月期における所得金額及び課税土地譲渡利益金額の認定にあたり、これらを構成する土地譲渡益について、品川区中延所在の土地の仕入価格に、一、六〇〇万円の水増しがあったとして、これを右各金額に加えたが、同土地の売却にあたっては、仲介者である大昭和精機の内畠章介に手数料として一、六〇〇万円を支払っており、これを差し引かなければならないので、結局原判決の同土地の譲渡益等に申告漏れがあるとした判断は誤りである、というのである。

そこで検討してみるのに、被告人の検察官に対する各供述調書、手島八郎に対する質問てん末書、被告法人の昭和四八年一二月期の総勘定元帳(東京高裁昭和五二年押第九三八号の3)中同土地の仮払金勘定を記載した部分その他の関係証拠を総合すると、被告法人においては、右土地を売主である手島八郎から実際には三、四五六万八、〇〇〇円で仕入れているのに、帳簿上は、大昭和精機から右実際の仕入価格に一、六〇〇万円を加算した五、〇五六万八、〇〇〇円で仕入れた旨の記帳がなされているのみならず、右水増し代金部分についても実際に出金手続がとられていることが認められ、被告人も検察官に対し、脱税の意思で同土地の仕入価格を一、六〇〇万円水増し記帳するなどの隠ぺい工作をした事実を認め、前掲被告法人の総勘定元帳、銀行元帳写等の資料に基づいてその経過を詳細に自供しているのであって、所論にそう被告人の当審公判廷における供述は、到底信用することができない。してみれば、原判決が右中延の土地の売却に関し、一、六〇〇万円譲渡益の申告除外があったとして、これをほ脱所得金額及び課税土地譲渡利益金額に加えたことは正当であり、論旨は理由がない。

論旨の三は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四八年一二月期における所得金額の認定にあたり、これを構成する土地譲渡益について、千葉県長生郡睦沢村所在の土地の仕入価格の水増し等により合計四、一九五万二、九八八円原価の水増しがあったと認定したが、これは、同土地の売却先である豊栄土地との交渉を有利に運ぶ方便として対豊栄土地用の裏帳簿に仕入価格等の水増計上をしたものであるのに、経理担当者が誤って右水増金額を土地仮払金帳簿に記帳し、これをそのまま確定申告してしまったことによるものであって、被告人には、右水増計上によって税を免れる意思はなかったのであるから、これを同期の所得金額から除外すべきであり、また、原判決は、右土地の譲渡益を七、七九二万六、六七三円と認定したが、被告法人では右水増し計上額相当の金額を大和通商ほか九件に簿外経費として支払ったほか、同金額に近い裏金を不在地主、地元協力者らに現金で支払ったので、右睦沢の土地からの譲渡益はなかった、というのである。

そこで検討してみるのに、右睦沢の土地の売渡し人である浅野高雄ほか六名に対する各質問てん末書、中村丈夫に対する質問てん末書、右大和通商に関する大蔵事務官の報告書、渡辺馨の報告書、中村守に対する質問てん末書、被告人の検察官に対する各供述調書及び前掲被告法人の昭和四八年一二月期の総勘定元帳中右睦沢の土地の仮払金勘定部分を総合すると、右土地の仕入価格について、浅野高雄ほか七名の地主に対し、実際よりも二、四九五万二、九八八円多く支払われたように記帳されていること、また同土地の買収の工作費として大和通商に八〇〇万円、渡辺馨に一、四〇〇万円が支払われたとの経理処理がなされているが、右大和通商に対する支払いは架空であり、右渡辺に支払われた金額は八〇〇万円にとどまること、そのほか、同土地の買収に関しては、簿外の支払手数料及び工作費として合計三、六三〇万円が支払われていることが認められ、被告人も検察官に対し、前掲被告法人の総勘定元帳や被告法人の従業員浅井正巳の作成した申述書及び答申書、取引メモ等に基づいて、脱税の意思で前記仕入れの水増し記帳などをした事実を詳細に自供しているのみならず、原審及び当審公判廷においても、右土地の譲渡益について脱税の意思があったことを認める供述をしているのであって、前記仕入れの水増し計上等が経理上の過誤であることを具体的に示す証拠は何ら存在せず、また、前記認定にかかる簿外経費のほかに、なお所論のような簿外経費が支出されたことをうかがわせる証跡も認められないことを考え合せると、原判決が、右土地の譲渡益について差引き二六五万二、九八八円のほ脱があったとして、これを被告法人の昭和四八年一二月期のほ脱所得金額に加算したことは正当であり、論旨は理由がない。

論旨の四は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四八年一二月期における所得金額の認定にあたり、被告法人が鷹羽ロイヤルから受取った違約金二、〇〇〇万円を雑収入の計上漏れとしてほ脱所得金額に加えたが、これは、被告法人の経理担当者が右二、〇〇〇万円を被告法人の雑収入として計上することを忘れた経理上の過誤から生じたことであって、被告人は右金額をほ脱する意思はなかったのであるから、原判決がこれをほ脱所得金額に加えたのは誤りである、というのである。

そこで検討してみるのに、吉澤信孝に対する質問てん末書、被告人の検察官に対する各供述調書その他の関係証拠を総合すると、被告法人は昭和四八年三月ころ右鷹羽ロイヤルと福岡県粕屋郡宇美町所在の土地の売買契約を結び、代金一億五、〇〇〇万円を支払ったが、先方の履行不能により契約解除となり、右代金の返還を受けるとともに違約金二、〇〇〇万円の支払いを受けたこと、被告人は右受領した金員を福岡から送金するにあたり、一億五、〇〇〇万円は被告法人名義の預金口座に、二、〇〇〇万円は被告法人の仮名預金口座にそれぞれ送金し、後者を簿外預金として公表から除外したことが認められ、被告人も検察官に対し、右二、〇〇〇万円は脱税の意図で仮名預金口座に送金したことを自供しており、原審公判廷においてもこれを維持しているのであって、所論にそう被告人の当審公判廷における供述はにわかに信用し難い。してみれば、原判決が右二、〇〇〇万円の雑収入をほ脱所得に加算したことは正当であり、論旨は理由がない。

控訴趣意第一点の第二中被告法人の昭和四九年一二月期における所得金額及び課税土地譲渡利益金額の誤認を主張する論旨について(以下判断の便宜上論旨を一及び二に区分することとする。)

論旨の一は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下昭和四九年一二月期という。)における所得金額及び課税土地譲渡利益金額の認定にあたり、これを構成する土地譲渡益について、浦和市大字堤外の土地(第一次買収分)に関し、公表計上土地譲渡益三、五〇四万三、七五四円のほか、架空の支払手数料六、六五〇万円があったとしてこれを右公表額に加算し、他方簿外の買収工作資金四〇〇万円の支払いがあったとしてこれを減算したが、右土地は農地をゴルフ場用地として買収したもので、造成工事完了後新日本観光に売却予定であったところ、知事の農地転用許可がおりないため、所有権移転登記も全買収地の三割程度についてしかなされておらず、造成工事も全く行われていないのであるから、これはまだ売上として計上すべきものではなく、原判決が、同土地の売買があったとして、その譲渡益九、七五四万三、七五四円、土地譲渡利益金額八、五七〇万二、一三六円を認定したことは事実を誤認したものである、というのである。

そこで検討してみるのに、被告人の検察官に対する各供述調書、中村守に対する質問てん末書、被告法人の昭和四九年一二月期の総勘定元帳(前記押収番号の4)、新日本観光の補助簿及び銀行帳の各写その他の関係証拠を総合すると、被告法人では新日本観光から依頼されて浦和市大字堤外の土地約三万坪(第一次買収分、以下同じ)を買収することになり、昭和四九年四月ころまでに買収を終り、そのころこれを同社に売却し、知事の農地転用許可手続未済の農地については同社を権利者とする所有権移転請求権仮登記を、その余の土地については同社に所有権移転登記を了したこと、そして、被告法人では同年中に右買収代金の支払い及び新日本観光からの売却代金の受領を了し、同年一二月三一日付で同土地の仮払金口座を締め切り、三、五〇四万三、七五四円の譲渡益を計上したことがそれぞれ認められるのであって、以上の事実に徴すると、原判決が、右土地の売買取引にかかる損益を被告法人の昭和四九年一二月期に計上すべきものとしたことは正当であり、所論指摘の、所有権移転登記未了の部分があること、ゴルフ場造成事業申出に対する知事の承認が得られず、同土地をゴルフ場に造成する義務の履行が未済であること等の事情はなんら右判断の妨げとなるものではない。なお前掲関係証拠を総合すると、前記公表の土地譲渡益は、主として中村守に対する架空の支払手数料六、六五〇万円を計上して利益を圧縮したもので、これを右公表利益に加え、簿外の買収工作資金四〇〇万円及び原価の計上漏れ二万一、九〇〇円を控除した九、七五二万一、八五四円が実際の土地譲渡益であり、これから直接又は間接に要した経費の額合計 一、一八四万一、六一八円を控除した金額八、五六八万〇、二三六円が土地譲渡利益金額となることが認められるところ、原判決は、土地譲渡利益金額算定の関係では、右計上漏れの二万一、九〇〇円を控除していないが、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。以上の次第で、原判決が右土地に関する損益を当期に計上すべきものとして、譲渡益等を認定したことは正当であり、論旨は理由がない。

論旨の二は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四九年一二月期における所得金額及び課税土地譲渡利益金額の認定にあたり、これを構成する土地譲渡益に関し、被告法人は深井義雄に対し、川崎市川崎区池上町所在の土地の二分の一の共有持分及び茨城県北茨城市中郷町所在の土地を売却し譲渡益を得たとして、これを右各金額に加算したが、右深井との取引はいずれも売買でなく、同人からの金員の借用及びそれを担保するための所有権移転登記であったから、これを資産の売却とみて譲渡益等を認定した原判決は事実を誤認したものである、というのである。

そこで検討してみるのに、深井義雄に対する質問てん末書、被告人の検察官に対する各供述調書その他の関係証拠を総合すると、右池上町の土地については、被告法人が国峰興業から買入れ、深井義雄に二分の一の共有持分を移転したのが実態であるのに、被告法人は表に出ず、右深井は山勇開発株式会社から共有持分を譲り受けた旨の契約書が作成され、同土地の売上は全く公表計上されていないこと、右中郷町の土地は、被告法人が買入れ、直接右深井に売却したのが実態であるのに、被告法人から一旦右山勇開発に売却され、同社から深井に譲渡された形式が整えられ、売却価格も過少に計上されていることが認められるのみならず、深井自身も被告法人との右各土地の取引が売買であることを明確に認め、被告人も検察官に対し、脱税の意思で前記のような工作をしたものであることを自認し、被告法人の昭和四九年一二月期の総勘定元帳、契約書類等の資料に基づき、その経過について詳細に自供していることが明らかである。一方、被告人は、公判段階になって、所論にそう供述するに至り、また、当審において、右深井が貸金の返還を求めた内容の昭和五五年三月四日付通告書写、被告法人が右催告に従って深井に元利金を送金したことを示す同年四月一六日付振込金受取書写、被告法人から深井への所有権移転登記が同年三月五日に錯誤を原因として取り消されたことを示す右中郷町の土地の登記簿騰本四通が提出されたが、被告人の右供述は、前記取引の実態と離れた契約書類の作成等の事実などに照らしてにわかに信用できず、また右通告書等の書類も、その作成日付に照らしてその証明力には多大の疑問を抱かざるを得ない。してみれば、原判決が右池上町の土地及び中郷町の土地についての取引を売買であるとして土地譲渡益、ほ脱所得金額及び課税土地譲渡利益金額を認定したことは正当であり、論旨は理由がない。

控訴趣意第一点の第二中受取利息及び支払利息の帰属の誤認を主張する趣旨について

論旨は、要するに、原判決は、被告法人の昭和四八年一二月期及び昭和四九年一二月期におけるほ脱所得金額の認定にあたり、これらを構成する受取利息及び支払利息に確定申告から除外されたものがあったとして原判示各修正損益計算書記載の当期増減金額を認定し、ほ脱所得金額に加減したが、その認定の基磯となった架空名義口座はすべて被告人個人に帰属すべき口座であるから、その受取利息、支払利息を被告法人に帰属するものとした原判決は事実を誤認したものである、というのである。

そこで検討してみるのに、被告法人の従業員である浅井正巳作成の被告人及び被告法人の仮名預金等についての各答申書、被告人に対する昭和五一年一一月六日付質問てん末書、被告人の検察官に対する各供述調書その他の関係証拠を総合すると、東京国税局による調査の結果、被告人及び被告法人に関係する多数の仮名の銀行口座が発見され、慎重な選別作業の結果、原判決が受取利息及び支払利息認定の基磯とした口座が被告法人に帰属するものと判定されたことが認められ、被告人も検察官らに対し、右判定結果を争わず、前掲浅井作成の答申書等に基づいて詳細な自供をしているのであって、右認定に反する被告人の当審公判廷における供述はにわかに信用することができない。してみれば、原判決がした受取利息及び支払利息の帰属についての判断に誤りはなく、論旨は理由がない。

控訴趣意第二点について

論旨は要するに、被告法人及び被告人に対する原判決の量刑が不当に重い、というのである。

そこで検討してみるのに、本件は、土地売却代金の全部又は一部の除外、仕入の水増し、多数の簿外預金の設定等の不正行為により計画的に行われたほ脱事犯で、期間も二事業年度にわたり、その間にほ脱した税額は八、五〇〇万円余りの巨額に達し、ほ脱率もかなりの高率であること、被告人は自ら本件ほ脱行為を企図実行した者であることに徴すると、被告人及び被告法人の刑事責任を軽視することはできないのであって、被告法人が修正申告を行なって法人税本税、重加算税、事業税等の納付を了したこと、被告人が反省し、被告法人の経理面の充実強化を約していることなど、被告法人及び被告人のために酌むべき諸事情を十分に考慮しても、被告法人らに対する原判決の量刑が重過ぎるとは認められない。論旨は理由がない。

よって刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 堀江一夫 裁判官 石田穰一 裁判官 浜井一夫)

○ 控訴趣意書

被告人 セントラル観光興業株式会社

同 関好夫

右被告人両名にかかる法人税法違反被告事件について弁護人は控訴の趣意を別紙の通り陳述します。何卒原判決破棄の上被告人らを救済せられんことを懇請します。

昭和五三年一月一八日

被告人両名

右弁護人

主任弁護人 小林宏也

弁護人 本多藤男

弁護人 長谷川武弘

東京高等裁判所

第一刑事部 御中

控訴趣意

第一点 原判決には量刑不当の違法があって、その違法が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れないものと思料いたします。

即ち、原判決は被告人会社を罰金一、八〇〇万円に、被告人関好夫を懲役一年二月(執行猶予三年)に夫夫処断し、その理由において次の通り認定した。

第一、被告人会社が昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において所得金額が金九、四〇二万七、九四三円であると認定すると共に、課税土地譲渡利益金が二、〇七六万六、〇〇〇円をそれぞれ認定したものであります。しかし、本件法人税法違反は被告人会社に経理事務能力の根本的欠如と土地に関する適格な処理能力の欠如していたところに原因が存することは原審以来強調して来たところでありまして、原判決のように至極当然の如く認定されることは被告人会社にとって余りに苛酷であるといわざるを得ないのであります。

すなわち、原判決認定の土地譲渡所得金額一億三八四万一、五六三円と課税土地利益二、〇七六万六、三八三円を分類整理の結果は次のように認定されているので、そのあらましを摘記してみると、次のように記載できるのであります。

1. 品川区戸越物件土地譲渡所得 二五九万円

〃 課税土地利益 〇円

2. 品川区豊町物件土地譲渡所得 二二六万七、八五〇円

〃 課税土地利益 〇円

3. 品川区中延金十証券土地譲渡所得 二一〇五万七、〇四〇円

〃 課税土地利益 二〇七六万六、三八三円

4. 長生郡睦沢物件土地譲渡所得 七七九二万六、六七三円

〃 課税土地利益 〇円

5. 九州八和産業(鷹羽ロイヤル)物件雑所得 二、〇〇〇万円

以上の1乃至5が原判決の認定する細目になるのであります(但し、消耗品費等の小額更正分を除く)。

しかるに、右1乃至5について真相を順次如実に記載するときは次のように述べることができるのであって寧ろ正当な会計処理を被告会社がしていたならば脱税の責を負う謂れが無かったことが事実上指摘できるものと思料されるのであります。

1・2についての認定については異議はなく、昭和五二年五月一三日付の減額更正(この内容は国税官史・大小田正行にしかわからず、内容閲覧は拒否され所轄の荏原税務署の担当係松野氏に知らせず、よってわからず秘密にしてある)を推測するに真実はその売上月日が戸越物件は、昭和四八年七月一一日に、豊町物件は昭和四八年六月三〇日に修正申告書になっているが、これは帳簿にのっている伝票の起票日を経理担当者が誤ってしまったものである。それを裏付けるものとして、この物件の仲介者・田辺善次郎氏に支払った仲介手数料の証憑書類が昭和四八年三月三一日になっているからこの売上月日は同日となり課税土地利益金額は零となります。

よって、この分は脱税と認定されるいわれはないと思います。また1・2の土地譲渡所得金額合計四八五万七、八五〇円がほ脱税額に当たるものであるが、これは土地仮払金の帳簿を見れば一目歴然としております。前述の売上月日も誤ることはさりながら豊町物件を佐藤行徳氏(田辺手数料含む)から仕入代金五五〇万円で買いうけ、そして戸越物件を仕入代金二〇〇万円で同氏より買うけ、それを同額にて大塚茂他八名と加藤洋他一名に売却すれば零となるものであり、企業が利潤なしで商売をするなど(親子社員などは別)三千世界に類を見ないものであると思います。経理担当者は証憑書類を正しく見ることもできず土地仮払金には売却した先も記載せず白紙で有り、もはや全く事務処理能力の欠如のためであったという外は無いのであります。

したがって、被告人関好夫は経理を経理担当者に一任していて、その結果脱税違反が起ったことには当惑したものであり、犯意がなかったものであります。

要するに女性全体にどこの企業においても仕事に対する安易な考え方、杜撰さ、知力、判断力、推理力などが大変おとり年をとると更に増大し、このことから起きたものであり、とくに莫大な売上が毎日ある会社などでは、得意先帳簿などは殆んど女性が担当しており、売上もれは年に二、〇〇〇万円や三、〇〇〇万円クラスはざらであり、そのもとになる請求書をもらして得意先会社は知らん顔で何ケ月か何年かして気が付いた部分を再請求して、売上に計上されるものであります。それを社長などは、細かいことがわからずまかせぱなしであり、損をしているのを気付かないのが現状であります。被告会社とても同じことであり、ただ不動産関係の場合は、契約書をかわせば請求書を出さなくとも売上代金が入金してしまうものであるから、その点が相違するだけであります。

したがって、関好夫には犯意がないので脱税にはあたらないのであります。それ故更正処分が正しいのであります。

※帳簿上貸借対照表上荒利益しか表示がなく総額の売上高と仕入高が一目でみられなく、企業会計原則(総額主義の原則、真実、正規の簿記の原則等)はのっとっていないものであります。

品川区戸越6-406-1 他1件底地106.67m2及品川区豊町3-1-2他8件底地500.41m2取引構成図

(昭和48年3月31日)

〈省略〉

※ 18,769.850円にて供述調書になっているが実際の計算では、13,267,850円になっている。

昭和48年度戸越豊町誤り計上分

〈省略〉

3 脱税金額に異議が有り、内畠章介に対する不動産仲介手数料一、六〇〇万円は損金として認められるべきものであり、まして、理論的経理事務を処理していたならば脱税と認定される謂れはないものでありまして、したがって原判決所得金額九、四〇二万七、九四三円より一、六〇〇万円を差引くべきものであると共に原判決課税土地利益額二、〇七六万六、〇〇〇円より一、六一三万三、三三四円を差引くべきものであると謂得るのであります。

これは別表の通りであり、大昭和精機の内畠に対し関好夫は個人として金一、六〇〇万円の貸金(昭和四八年六月二六日以前貸付)がありますが、内畠氏は当時資金ぐりに苦しんでおり、返済不能なので中延五丁目(金+証券)物件の売却先を紹介斡旋をしてもらえれば、その貸金と相殺することによって処理して欲しいと懇謂(せい)されて、之に応じて処理することになったのであります。之は俗にいう相互利得取引にほかならないのであります。この物件は一億三、三三六万四、〇二一円で水口銀一(昭和四八年六月二五日付登記簿謄本売買有)より被告会社が買入しましたが大きな金額なので売上先がみつからず、被告会社も資金額の調達に困っており、社長であり他の会社の社長など知人の多い内畠氏に願い依頼して処分したわけであります。そしてどうしても売却できなかった部分二二九・四八平方メートルはやむを得ず被告会社がその固定資産(セントラル会館建物)として自已所有建物の敷地として使用しているものであります。

以上の次第でありますから被告会社には脱税の犯意は固よりなかったものでありまして手数料は損金と認定されるべきであります。従って、脱税であると認定されることは苛酷な処理であると思料せざるを得ないのであります。

※ この取引の仕訳を正しくわかりよくしますと、

〈省略〉

※内畠氏が手数料16,000,000円を収入して課税されている

ならば当法人のその手数料16,000,000円は損金として費用となるべきで否認されたのはおかしい。

品川中延5-945-5 宅地80.39m2

※全体の図型

〈省略〉

※山勇開発(株){明宏水産貿易の名義変更=新日本土地(株)=セントラル観光興業(株)}

4・5 金額の認定には異議がありませんが、脱税であると認定される謂れは無いと思料します。

4 之も帳簿の担当者の事務能力の欠如による杜撰な処理による誤りというのが真相でありまして、決して計画的な犯行ではなく勿論脱税の故意があるものではなく、従って本来は更正の処分をもって足りるものであると思料します。

これを説明しますと被告会社が、昭和四八年一月より三月の間に睦沢村物件の土地買収に対し、仕入金額の一部金額金四、一九五万二、九八八円を水増計上しました。これは昭和四八年一月一〇日千葉県庁発表による、ゴルフ場の開発の規制が強くなり許可の取得の正否が五年以上もかかったこと(この物件はゴルフ場用地として買収予定でした。)と、豊栄土地株式会社とその親会社である株式会社大林組の重圧により当初反当り四〇万円であったのがすぐに一〇〇万円になり約三倍の価格に吊り上げられ金策のあてもなくさりとて豊栄土地以外に売却先がなく、豊栄土地、大林組の術中に陥り手離さざるを得なくなったものであります。この物件は当初被告会社が入手すべく手掛けていたところ、豊栄土地が加わり無形の圧力や策謀(佐々木真太郎氏を通して料亭に呼びだされる政治的策謀等)にあやつられたものでどんな低い売却価格にされ原価を割る低価格にされるかわからないので豊栄土地に対してのみ対豊栄土地用帳簿の裏帳簿を水増して計上したものであり、それを経理担当者が経理処理能力に欠けるので正規の帳簿と対豊栄用の二重帳簿(銀行用と税務署提出用があるように)を作成するわけでもなく調査するわけでもなく深く考慮もせず単純に土地仮払金帳簿にのせて税務申告をしてしまったのが真相であります。これは土地仮払金の支払先の金額と証憑書類を照合すれば簡単に判明してしまうので税務処理能力の幼稚さを見れば、これは自ずと明らかになるものでありまして固より脱税の犯意はなく経理担当者の幼稚さが招いたもので被告代表者関好夫の犯意は固より存在しませんでした。又土地税制や不動産経理が繁雑で難解専門的になっている折から経理上の事務処理は関好夫には一切理解できないので自ら関与せず前述の女子担当者に口頭で言うだけで、その後どう処理されたかわからなかったのでありまして、税金をいくら納めたらよいか、利益はどのくらいになるのか聞くだけであったのであります。即ち被告人には脱税の意図も計画もまったくなく結果からみたとき脱税の責を負わされたものであります。即ち、すべて経理についての無知無能力がもたらしたものであります。

又、水増計上分は大和通商他9件に金四、一九五万二、九八八円を支払いましたが同額に近い裏金を不在地主、地元協力者のボス他に現金で支払いましたが、だれも真実のことを認めてくれなかったことは遺憾のきわみであります。

また、豊栄土地に折衝の結果、水増して売買代金三億六、〇〇〇万円で売却しましたが、実際の原価は事実上金三億七、四二六万四、七六一円となり、最初の思惑どおり豊栄土地の術中に陥ったといわざるを得なかったのであります。

千葉県長生郡睦沢村地区構成図

〈省略〉

5は単純な伝票の仕訳の誤りでありますから、これも脱税をもって認定されるのは苛酷であり、更正の処分をもってなされれば足りるものであったのであります。

九州八和産業物件(鷹羽ロイヤル)雑収入所得二、〇〇〇万円の経理の伝票もれを正しく仕訳をすると別表の通りになるのであります。関好夫個人架空口座に仕入先鷹羽ロイヤルより入金した事実は何の誤りや脱税でなく、ただ経理担当者の伝票漏れのミスであります。また昭和四八年三月二九日に鷹羽ロイヤルに一億五、〇〇〇万円を現金預金で支払い同年五月三一日に太陽神戸銀行荏原支店当法人口座に同額返金になったことは何人が考えても解約返金を意味し、不動産業界では契約違約金を受取るのは当然常識であり、この雑収入二、〇〇〇万円の計上を洩したのは経理担当者の帳簿処理上の過誤であり、経理事務能力に欠ける。関個人には実質上責任を負わされる謂れのないものであります。証拠から観まして、当時の経理担当者の作成した仮払帳簿を見れば経理事務能力の欠陥であることは一見して明白であります。それは被告会社の帳簿の記入方法が土地仮払金の借方が(資産)損失を記入し貸方が(負債)収益を記入するようにすべての不動産関係はこの方式で記入がなされているのであります。(複式簿記の整備ができていらい)。したがって一億五、〇〇〇万円が借方に資産として同額貸方に資産の減少として記入されて残高が零となっているが不動産の契約違約金貸方収益として二、〇〇〇万円記入されて、それを借方に同額損益に振替えして残高零として処理されていないのであります。このやり方によると土地仮払金以外に不動産収入の処理の科目が考えられないので過誤であることが一見にしてわかるのであります。したがって上述のように経理担当者のミスであり関好夫の実質上の犯意はないものというべきであります。

※一億五、〇〇〇万円の支払入金先が鷹羽ロイヤル吉沢信孝に支払ったのに仲介者の八和産業としたのは経理担当者の取引理解がたりないものであることを証して余りがあります。

九州八和産業仕訳及取引図

当法人仕訳もれ分

仕入先鷹羽ロイヤル(吉沢信孝)より不動産売買契約破棄による契約違約金関個人口座に入金となる。

〈省略〉

※ 関勘定の借方は関個人に対する当法人よりの貸付金及び借入金の返済を意味する。なお関個人の仕訳をすると

貸方

借方 太陽神戸五反田普通預金20,000,000円 当法人よりの借入金又は貸付金の返済20,000,000円

(関個人架空名義口座 井上直樹)

〈省略〉

以上の次第でありますから原判決の認定した所得金額九、四〇二万七、九四三円より3の一、六〇〇万円を控除し、原判決課税土地利益金額二、〇七六万六、〇〇〇円より3の一、六一三万三、三三四円を控除して算定するのが正当の処分であると謂得ようかと存じます。然りとすれば被告人会社の正当な所得金額は七、八〇二万七、九四三円となり、課税所得金額は四六三万二、〇〇〇円となるべきが正当な処理でありまして従って被告会社の課税されるべき法人税額は前述の正当な所得金額七、八〇二万七、九四三円に対する税額二、八〇三万七、一二一円となるべきであり、したがって課税土地利益額である四六三万二、〇〇〇円に対する法人税は九二万六、四〇〇円となるべきであって、したがって以上の合計税額二、九二三万三、五二一円より控除所得税額六三万二、一九一円を控除した結果、合計法人税額は二、八六〇万一、三〇〇円となるべきであります。

以上の論旨を若干補足主張いたしますと

二、原判決は判示第一は於て昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の被告会社の実際の所得金額が九、四〇二万七、九四三円、課税土地譲渡利益金額が二、〇七六万六、〇〇〇円と認定しておりますけれども、この認定は事の真相に反するものでありまして的確な税務処理会計事務処理をして真実の所得金額および課税土地譲渡利益金額は右の各金額からそれぞれ被告会社が大昭和精機株式会社に支払った不動産仲介報酬金一、六〇〇万円および一、六一三万三、三三四円(上記報酬金に経費一三万三三三円を加えた額)を控除したものでなければならないのであります。従って同判示の右事業年度における正規の法人税額ならびにほ脱額の認定も適正を欠くことになるものといわなければならないのであります。以下に右一、六〇〇万円並に一、六一三万三、三三四円から控除すべき理由を述べてゆきますと次のようになります。

被告会社は手島八郎所有の東京都品川区中延五丁目九四五番五の土地(水口銀一所有の同所同番一の土地と共に)を買受ける折衝を進めていましたところ株式会社大昭和精機代表取締役・内畠章介から右手島所有土地の買受希望者を探してくるから同会社を右売買に関与させ、それによって報酬を支払って貰いたい旨の申入がありましたので、被告会社は之を承諾し、結局手島の所有土地を右大昭和精機が売買代金三、四五六万八、〇〇〇円をもって買受け、これを被告会社が昭和四八年六月二五日大昭和精機から売買代金五、〇五六万八、〇〇〇円(大昭和精機に対する報酬分を加算した金額)で買受け、更に大昭和精機・代表取締役内畠章介が紹介して来た金+証券株式会社へ売買代金五、五九三万六、〇〇〇円で売渡したのであります。従って大昭和精機としては、右土地売を通して、金一、六〇〇万円の利益を得たわけでありますが、同会社はこれよりさき、被告会社代表者である被告人関好夫個人に対して金一、六〇〇万円の借受人債務があり、その弁済ができないままでありましたので、この際右被告会社からの支払を受けた土地売買代金の一部(すなわち実質的には報酬として支払われた金一、六〇〇万円)で返済することとし、被告会社から右代金の支払のために受領した約束手形二通(合計金一、六〇〇万円)を満期(昭和四九年三月一日)に取立てた金員を、右関好夫が指定した口座(株式会社太陽神戸銀行荏原支店の岡田友子名義の普通預金口座)あてに、昭和四九年三月六日振込送金して、右関に対する借受金債務を弁済したものであります。

以上の次第でありますので、原判決が認定した昭和四八年度の所得金額から一、六〇〇万円を差引いた金七、八〇二万七、九四三円が真正な所得金額であり、また真正な課税譲渡利益金額は原判決が認定した金二、〇七六万六、〇〇〇円から一、六一三万三、三三四円(一、六〇〇万円+直接間接に要した経費の差額金一三万三、三三四円、而して一三万三、三三四円は原価金五、〇八七万八、九六〇円也の一二分の一の一割に相当する金四二三、九九一円から既に計上されている二九〇、六五七円を差引いたもの)を控除した金四六三万二、〇〇〇円が正当の金額であります。よって所得の法人税額は二、八三〇万七、一二一円、課税土地利益金の法人税額は九二万六、四〇〇円となり、控除所得税額六三万二、一九一円を差引いて結局合計法人税額は二、八六〇万一、三〇〇円となりほ脱額は金二、四二一万三、二〇〇円にとどまるものというべきであります。

48年度税額計算書

〈省略〉

税額計算書

〈省略〉

昭和48年度土地譲渡所得金額課税土地利益金額内訳

〈省略〉

昭和48年度修正所得金額及課税土地利益

〈省略〉

第二、原判決は被告人会社の昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が九、二五〇万六、四九九円と認定し、課税土地譲渡利益金が一億一、八六〇万五、〇〇〇円であるとそれぞれ認定しましたが、しかしこの認定も第一と同様に被告会社には苛酷きわまるものであります。

すなわち、前記第一と同様な論旨で主張を進めますと原判決の認定する土地譲渡所得一億三、〇八四万二、四六九円、課税土地利益一億一、八六〇万五、〇〇〇円を分類整理し、次のようは認定されているのでその梗概を摘記すると次のように整理されるのであります。

1 浦和市堤外土地譲渡所得 九、七五四万三、七五四円

〃 課税土地利益 八、五七〇万二、一三六円

2 北茨城市中郷町土地譲渡所得 一、六三五万 三九五円

〃 課税土地利益 一、六〇四万一、〇四九円

3 川崎市池上町土地譲渡所得 一、六九四万四、三二〇円

〃 課税土地利益 一、六八六万一、八一五円

以上が原判決の認定の細目である(但し、消耗品費、小額更正分は除く)。

しかるに右1・2・3について取引の真相を順次如実に記載してゆきますと次のようになるのであります。

1・2・3ともに金額、内容いずれもなっとくできないものであります。何となれば1は未だ未完成な造成地で、所属埼玉県庁より田畑地の地目の変更についての許可がなされず所有権移転登記が完了できた部分は僅か三〇%に過ぎないのであります。したがって同土地全体の所有権移転も本来売買と認定される謂れは無く、従って之を売上額として計上される謂れもないのでありまして、したがって本件を脱税をもって処遇される謂れ無きものであると思料するのであります。

当法人昭和四九年度決算申告書は土地譲渡収入額五億七、一二〇万八、五〇五円同上に対応する原価額五億三、六一六万四、七五一円計上をしたものに昭和五一年一二月一〇日付修正申告書を国税官吏・大小田正行氏が作成し、原価額を四億七、三六六万四、七五一円に直して、それを強制により模写して出したものであります。さて浦和一次(当初はテニス場予定用地)、浦和二次は同一物件所在地で当法人がゴルフ場の造成地作りを計画して土地の造成工事が完成したら新日本観光興業(株)(ゴルフ場経営)に完成土地を売却する約定になっていました。しかるところ、本土地は農地(田畑)であったので容易に埼玉県知事の許可がおりず、農地転用が出来ず、したがって新日本観光の売買契約成立に関する約定書、覚書にゴルフ場用地としての買収することを、うたっているのでありまして、本業がゴルフ業者であるため田畑を買っても社業の目的に供し得ず、なんの役にたたないのであります。そこで売買に計上すべきものではなかったのであります。

また、所有権移転登記も浦和一次で全体の三割しか登記がしてないのに未登記が七割を含めた全体が売買に計上されているが、そうすると浦和二次も全体の一割しか登記がなく未登記を九割を含めた全体を売買に計上しなくては理に合わない(浦和二次は登記済の全体の一割しか新日本土地で、売買に計上していない)。本来ならば浦和一次で全体の三割、浦和二次で全体の一割を売買に計上すべきであるが部分的に引渡されてもなんの役にもたたず、前述県庁の農転許可がおりて全部登記が完了するまで売買することは約定にも反するし、又するべきでないのであります。

又、ここの土地は田畑であり、約定覚書によればゴルフ場用地としての買収であるから上述の許可と登記が完了してそれから田畑を造成工事してゴルフ場用土地として完成してから引渡しするのであるから田畑のままであるということは建物にたとえると、工事が全然進行してなく上棟式位の中途工事のまま引渡されたものとみなされ、工事契約書に違反するものであります。従って、この物件も約定書に違反することになるので、したがって売買に計上すべきではなく、脱税には該当しないものであります。

金銭の受払いの点を説明しますと、新日本観光興業(株)より未成工事預り金(仮受金)として浦和一次五億七、一二〇万八、五〇五円、浦和二次七億二、〇六三万八、七五〇円を受領しましたが、その金で仕入土地代金として浦和地主に、浦和一次分として四億七、三六六万四、七五一円を五三名に、浦和二次に三億五、二二三万四、四〇二円を四〇名に支払ったのであります。

この分別表参照

浦和市大字提外 浦和第1次構成図

〈省略〉

※この内仕入473,664,751 売上571,208,505

当法人昭和49年度計上は誤り

造成工事未定でゴルフ用地として不許可

浦和市大字堤外浦和2次構成図

昭和51年12月31日現在

〈省略〉

※この内一部仕入 99,277,500 売上 133,693,750

新日本土地(株)昭和50年度下期計上は誤り

造成工事未定でゴルフ用地として不許可

浦和市大字堤外浦和1次2次仕訳図

〈省略〉

※未取付分として9割分の登記料約4,000,000ゴルフ場の土地の造成地工事代未計上

浦和市大字堤外ゴルフ場未完成造成用地

〈省略〉

2と3はいずれも真相は売買ではなく借入金の担保として所有権移転をしたものをいずれも売買であるとして処理したものであるから実質上は脱税をもって処遇される謂れの無いものであると思料いたします。

2は、鈴木保雄より買受けたものも(有)国土総合利用研究所長中要の仲介を受け買受けたものであります。当法人帳簿土地仮払金に昭和四九年七月九日に記入してある同年六月二七日付山勇開発(株)(当法人ダミー会社)に土地仕入(棚卸)原価金一、一〇八万円で売却原価の振替原価として貸方に減額されていますが、昭和四九年度確定申告書に土地売上代金、金一、三五〇万円と計上したことは経理担当者の能力の欠如による過誤であります。なぜならば、これは売上代金としたのは深井義雄氏より山勇開発を通して当法人に入金した借入金であるからであります。したがって売却原価とされている金は棚卸土地として借方にもどさねばならない筋合であります。したがって昭和四九年五月三〇日に仕入総額、金二、二一七万三、五七〇円が現在迄におよんでいる当法人の棚卸土地の総額であります。又深井よりの借入金は伝票もれ分(別表)一、六八六万円と前述の一、三五〇万円の合計金三、〇三六万円が現在の借入金の総額であります。これは深井義雄が金を貸すから担保を提供せられたいということで借入したものであります。又、担保として所有権の二分の一を所有権移転の本登記をしたまま、現在におよんでいるのであります。したがって仮りに購入土地代金の二分の一金一、一〇六万円の(減額更正により金一、四〇〇万五、六〇五円となる)物件を昭和四九年五月三〇日に仕入し、二七日間の短日数で約三倍の金額の売上代金三、〇三六万円で浦和ゴルフ場の買収に於いて協力してくださった深井義雄氏に暴利をむさぼって売却することは出来ないのであります。従って右は真相としても土地の売買ではなく借入金であるからそれにそって処遇されるべきものであります。深井義雄氏に本登記の目的を売買としたことは単純なる税法のわからない営業員及び経理担当者の明白な過誤であります。

物件、茨城県北茨城市中郷町日棚字焼切坂1,855他4筆 山林16,985m2

修正図

(実測51,517m2)

〈省略〉

3は、国税局官吏により作成された昭和四九年度修正申告書に川崎市池上町の物件を土地譲渡所得として計上され売上高は金二、六八四万四、九二〇円であり、これは深井氏よりの借 金二、六二五万円に小山司法書士に支払った、金五九万四、九二〇円をプラスしたものであり、原価とみなされる金九九〇万六〇〇円は仕入総額金二、〇五〇万一、二〇〇円より山本幸太郎の手数料七〇万円を差引いた金額金一、九八〇万一、二〇〇円の二分の一であるのがあらましであります。

したがって、これらは売上や仕入として計上すべきではなかったのであります。それは単に深井義雄に対する担保の目的をもってした登記の原因を売買としたことに原因があるのであります。これは経理が理解できない営業員及び経理担当者のミスであり、関好夫として脱税の犯意があったわけではないのであります。その証拠に被告会社の経理担当者は現在棚卸土地残金二、〇五〇万一、二〇〇円の二分の一を売上原価に振分けしていないし、登記の原因を売買としたならば、この登記済の物件が法令により売上となってしまうことを知らなかったのであります。また仮りに売上として認定されるにしても売上原価額金九九〇万六〇〇円をその日のうちに約三倍の売価金二、六八四万四、九二〇円をもって深井義雄氏に売却するなどということは考えられないことであります。

さらに、池上町の土地はその上に三国人の家屋があり借地権者に対する巨額な立退料や裁判費、解体料、金利等がかかり売却しても深井義雄本人の手にはおえないものであります。したがって右取引正しく借入金であり、脱税をもって処理されることは全く心外であります。

川崎市川崎区池上町3~1 他1筆宅地面積2,320.6m2

修正図

※売上高と計上させられた金額26,844,920円は借入金26,250,000円+登記料594,920円である。

〈省略〉

その他関好夫架空口座について申しますと、普通預金、通知預金、定期預金等預金の架空名義口座名義人有賀由雄等ありますがこれは関好夫個人の過去の事業所得が有りその積立や給与所得、不動産所得等の全部を将来の事業の不時の危険や拡大又はどこでも有る困難なる取引上の諸問題の処理を円滑にするために昔より貯えているうちの一部が架空名義になっているにすぎません。個人の生活の方は、小会社である(株)千両の代表者である関正子の所得によりまかなっています。

よって、この架空口座と当法人の法人税違反とは関係がないのであります。この預金の当法人に対する受取利息や支払利息を計算して計上していますが本来はそれをする必要がない訳であります。従って、原判決譲渡所得金額九、二五〇万六、四九九円より1・2・3の合計額一億三、〇八四万二、四六九円を控除するとマイナス三、八三三万五、九七〇円となり税額は零となるべきものであります。原判決認定の課税土地利益金額一億一、八六〇万五、〇〇〇円より1・2・3の合計一億一、八六〇万五、〇〇〇円を差引くべきでありますから、そうすると所得金額はマイナス三、八三三万五、九七〇円となり課税土地譲渡利益金額は零となる筋合のものであります。

したがって、昭和四九年度の法人税額は零となり同年度に限り法人税違反は成立しないものでありまして、更正処分のみとなるものであります。

被告人会社に於て税額の算定を行うと、別表の通りであります。

49年度税額計算書修正

〈省略〉

別紙(三)の二

税額計算書

〈省略〉

昭和49年度土地譲渡所得金額課税土地利益金額内訳

〈省略〉

昭和49年度修正所得金額及課税土地利益

〈省略〉

二、原判決は第二において昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の被告会社の実際の所得金額が九、二五〇万六、四九九円課税土地譲渡利益金額は一億一、八六〇万五、〇〇〇円と認定しましたが、適正な会計処理をしていたときはかかる認定は事実を事実上無視するものであり、真実の所得金額は右説示所得金額から一億三、〇八四万二、四六九円を控除したものでなければなりません。また真実の課税土地譲渡利益金額から一億一、八六〇万五、〇〇〇円を控除したものでなければならないとすべきものと存じます。

従って、同判示の右事業年度における正規の法人税額ならびにほ脱額の認定も適正を欠き被告らに苛酷な認定であるといわざるを得ないのであります。

以下にその理由を申述べます。

1 被告人会社は昭和四九年三月三一日新日本観光興業株式会社に対し、埼玉県浦和市堤外の土地総面積一〇八、八四五m2を売買代金総額五億七、一二〇万八、五〇五円で売却したので右金額からその原価額四億七、三六六万四、七五一円を控除した金九、七五四万三、七五四円が形式上の所得金額であり、また同金額から直接間接に要した経費の総額金一、一八四万一、六一八円を控除した金八、五七〇万二、一三六円が後述の如き特段の事情無き限り形式上課税土地譲渡益と観られてもやむを得ないかも知れません。しかし、この土地についての真相は農地に関する売買であり、右土地を新日本観光興業株式会社に対して売渡すという表題名の売買契約は実質をよく見きわめると、あくまで右土地において右買受会社がゴルフ場を建設するためになしたものであって所有権移転及び同登記に必要な農地法上の許可及び開発行為に関する法令、条例上の許可が地方自治団体から得られたときに効力を生ずるという、いわゆる停止条件付売買契約であるとともにこれらの条件が成就しないときには売買は解除となるいわゆる解除条件付売買であります(被告人原審供述調書ご参照)。したがって前記各許可が得られずに、ゴルフ場建設用地に供することができなくなったときは、之らの金員は右買受会社に返還しなければならない約定のもとになされたものであります(ゴルフ場用地買取契約に関する覚書四五三丁以下ご参照)。

従って、右金額は昭和四九年度における被告会社の所得金額、課税土地譲渡金額として計上すべきものでないというべきであります。

而して、右土地については現に埼玉県知事から昭和五二年九月二八日付文書をもって「ゴルフ場等の造成事業に関する指導要綱」に基づき審査された結果「申出にかかる造成事業は(造成事業の前提となる農地転用許可の見通しがないことおよび申出地が建設省荒川上流工事事務所所管の荒川調整池計画の予定区域に含まれていることの理由から)好ましくない」と決定した旨の通知がなされ、そのために目下被告会社は前記買受会社から預託金の返還を請求されているのであります。(埼玉県知事よりの通知書四七四丁以下埼玉県議会審議経過第八ノ一・二四六二・三丁)。

2. 次に被告会社は深井義雄に対し

(イ) 昭和四九年二月一八日神奈川県川崎市川崎区池上町三番一および同所同番一五の二筆の土地(合計地積二、三〇二・六二m2の持分二分の一)を売買代金で売渡したとされる取引があったとされ、従って形式上はその原価額九九〇万六〇〇円を差引いた金一、六九四万四、三二〇円が所得金額とされ、またこれから直接間接に要した経費額金八二、五〇五円を差引いた金一、六八六万一、八一五円が課税土地譲渡利益金額とされております。また、

(ロ) 同人に対し

昭和四九年六月二七日茨城県北茨城市中郷町日棚一、八五五番、一、八五六番、一、八六〇番二および一、八六三番の四筆の山林(合計地積公簿上一〇・七五一m2)を売買代金三、〇三六万円で売渡したとされる取引があったとされ、従って形式上は、その原価額一、一〇六万円と減額更正がなされた原価額二九四万五、六〇五円を控除した金一、六三五万四、三九五円が所得金額とされ、またこの金額から直接間接に要した経費三一万三、三四六円を控除した金一、六〇四万一、〇四九円が課税土地譲渡利益金額と認定されているのであります。

しかしながら。被告会社と深井義雄との間の右(イ)(ロ)の取引はいずれもその実質実体上土地の売買ではなく

イは土地の持分二分の一を担保として

ロは、土地の所有権を担保としてなされた融資(金銭消費貸借)であったのが真相であります。すなわち被告会社は、当時ゴルフ場建設用地に供する目的のもとに相当多くの面積の土地を買取る事業を進めており、その買取り資金として多額の資金を必要としたのでありますが、これらの所要金額を悉く銀行より融資を求めるときにはその負担金利の額も軽視できない実情であったので、その一部を銀行以外の私人からの融資に求める方法をとることとし、その代償としては後日被告会社に於て土地を転売して利益を得たときに、応分の謝礼金を付加して右融資金(借受金)を返済するという方法を執ったものでありまして深井義雄関係は正に右取引の典型的事例であったのであります。右イ、ロとも売買とされている金額を深井義雄から借受け、その弁済期は借受日(売買契約の型式を執った日)から三年目の期日とし、右融資金-貸金債務を担保するため

イについては、深井に対し二分の一の土地の持分権移転の登記をし、ロについては、同人に対し所有権移転登記をしたものであります。従って右イ、ロにおいてこれを土地の売買であるとして前記金額のような所得金額課税土地譲渡利益金額を計上することは、実体、真相にそぐわない事実認定であるというべきであって実体的にはこれら貸金額は原判決判示の脱税額からそれぞれ控除せられて然るべきものであります。しかして深井義雄からは現在被告会社に対し右融資金の返還請求がなされております。

以上の次第でありますから昭和四九年度の真正の所得金額は原判決が認定した金九、二五〇万六、四九九円から右の控除すべき金額(右1、2、イロで所得金額と目されたもの)一億三、〇八四万二、四六九円を控除した額であるというべきであります。してみると真正な所得金額は三、八三三万五、九七〇円の欠損となり、また真正の課税土地譲渡利益金額は原判決が認定した金一億一、八六〇万五、〇〇〇円から前記控除すべき金額(右1、2、イロにおいて課税土地譲渡利益金額と目されたもの)を控除したものというべきである。そうすると真正な課税土地譲渡利益金額は零となるべき事実関係にあるといわなければならないのであります。

(以上の結び)

以上の被告人の主張は之を要するに、被告会社代表者は固より担当帳簿記載者の経理知識の不充分なことから生じた経理処理不行届の結果であって仮りに経理処理能力をもってすれば脱税の責任を負わされる謂れ無きものであったといわざるを得ないのであります。

第二点 原判決には量刑不当の違法があって、その違法が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決は破棄を免れないと思料します。すなわち、原審に於て被告人両名は本件が脱税の犯意があったものではなく、したがって又計画的なものではないことを主張した外左記諸点を強調したのでありますが、原判決は之らの諸点について之を無視又は看過した違法があるものと謂わざるを得ないのであります。

(一) 本件は被告会社が当初から計画的に脱税しようとしたものではなく、経理事務能力に欠けた企業組織と相俟って生じた同情すべき事件であったこと(被告人上申書第七・四七一丁ご参照)。

(二) 企業体として経理事務組織が不完全であり、税務処理専門家に委嘱して事務処理を行ったならば、かかる責任を負わされずにすんだこと。

(三) 睦沢村の件は、動機として不動産売買の競争の渦中に投入され、売却処分を余儀なくされたことから、とっさの間(被告人の原審提出の上申書-四六四丁以下ご参照)は感情的処理をせまられたこと。

(四) 更正処理の官庁の指示決定に対し、直ちに修正申告を行い更正決定はしたがう納税わ完了したこと(三五九丁以下四〇七丁までご参照)。

(五) 被告人関に於て改俊の情著著であって、かかる事犯の絶滅を誓約していること(山田税務会計事務所山田晴弘税理士の上申書四七三丁、被告人の上申書四六四丁以下第七・四七一丁の項ご参照)。

以上の次第でありますから、諸般の事実関係御酌量の上原判決破棄の上大巾な減額の御判決を賜りたく、本件控訴に及んだ次第であります。

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